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「分かんない。
わたしが遅かったから、先に帰ったんじゃない?」
「あれ? ……なに、お前ら、ケンカでもしたの」
からかうような言葉に、「そんなんじゃないよ」と慌てて言うと、俊輔はうはは、と可笑しそうに笑って、
「お前ら、二人ともヘソ曲げると黙るタイプだからな。
早めに折れとかないと長引くぞ」
大きな手がこちらに伸びて来て、人差し指が鼻の頭をすいっと下から撫で上げた。
わたしを子ども扱いする時、俊輔は決まってこれをやる。
「お前の方から早く謝っちゃえよ。
何があったか知らないけどさ」
「だから……そんなんじゃないってば……」
わたしは擦られた鼻を撫で、口を尖らせた。
─くすぐったい。鼻の下も、心も。
俊輔の隣は相変わらず居心地が良すぎて、優しすぎて、気を抜いたら泣いてしまいそうだった。
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