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なんとかゲーム機をセットし終えた私はコントローラーの片方を昴に渡した。
私からコントローラーを受け取った昴はしばらく固まっていたけど、何がおかしかったのか急に笑いだした。
「あははっ。こんな夜中に格闘ゲーム?」
「私休みだし関係ない。あ、でも昴は仕事?」
「昼からだから大丈夫」
あ、いつもの笑顔に戻った。
センスの良い余所行きの格好のままテレビの前に座る昴。
私もその隣に座った。
「ゲームなんていつぶりだろう」
「した事あるだけマシでしょ。私なんてこれが初めて」
「え!?じゃあなんでゲームやろうと思ったわけ!?」
「……気分?」
本当は気分なんかじゃない。
昴を元気づけたかっただけかも。
いつも仕事で無理をしてるなら、せめて私と一緒にいる時くらいは休んでもらいたいから。
私の中で昴はもう『ただの同居人』ではなく『友達』になっているんだと自覚した。
「ちょ!?本当に苺ちゃん初めてゲームした!?めっちゃ強いんだけど!?」
「昴が弱いだけじゃない?」
「いやいや!!その必殺技何!?」
「勝手にコイツが放った」
「そんなわけないから!!」
楽しそうにはしゃぐ昴。
私も少しだけ笑った。
そして私達は朝になるまでゲームをした。
二人でテレビの前で寝落ちをして、起きた時にはもう昴は仕事に行っていた。
置き手紙には、『苺ちゃんありがとう。カレー勝手に食べちゃってごめんね。美味しかったよ!仕事行ってきます』と書かれていた。
私は誰もいない玄関に向かって「行ってらっしゃい」と呟いた。
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