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どしゃ降りの雨の中、空を見上げて泣いているのが印象的だった。
あれは雨なのか……
それとも涙なのか……
よく分からなかったけれど、私にはなんだか泣いているように見えた。
私の住んでいるマンションの前に座り込んで、私に気付かずにずっと空を見上げていた。
綺麗な顔立ちのその男の子はテレビでよく見る顔。
今人気の若手俳優、原 昴(はら すばる)だった。
「苺ちゃーん!!」
朝からニコニコ笑顔で抱き着いてきた男の子。
私はベッドの上でその男の子を鬱陶しそうに見た。
「昴、うるさい……」
頭を押さえて昴から離れて立ち上がる。
そんな私を、誰もが虜になる笑顔で見つめる俳優。
原 昴20歳。
数日前、私はこの俳優を拾った。
榊 苺(さかき いちご)20歳。
普通のOLだ。
昴の事は知っていた。
大人気なわけだし、知らない人の方が珍しいくらいだ。
だけど、私が知っている昴はこんなニコニコした俳優ではない。
原 昴はクールな二枚目俳優で有名だ。
それなのに……
「普段の昴って、なんでそんなにニコニコしてベタベタしてくるの?」
そう言ってリビングで水を飲む。
相変わらず昴はニコニコしていた。
「苺ちゃんは僕の恩人だから」
「意味不明」
ため息をついて私は冷蔵庫をあけた。
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