クリスマス

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昴が仕事を休んでから数日が経っていた。 あれから昴はすぐに仕事に復帰した。 清水さんも私も心配したけど昴は「気にしないで」と言って平気そうにして仕事へ行った。 昴の『気にしないで』は気にしちゃうって……。 仕事をしながら溜息をつく。 「どうしたの?いつにも増して険しい表情してるけど」 真菜にそう言われて真菜を睨む。 「うるさい」 「心配してるんじゃん。辛辣だなぁ」 その顔は心配してない。 楽しそうに笑って私を見ている真菜が悪魔に見えた。 「別に何でもない。仕事して」 「ちゃんとしてますー。息抜きも大切なんですー」 「息抜きって……」 呆れると真菜が私に小声で話しかけてきた。 「昴くんのこと?」 そう言われて固まる。 こいつは、そういうことは鋭いんだから。 「……そうだとしても言わない」 「なんでー!?」 「秘密にしないといけないことだってあるの。ほら、私忙しいの。話してる時間なんてないから」 パソコンに向き合って真菜から目を逸らす。 真菜が膨れるのが見えたけど真菜はそれ以上追求してこなかった。 危ない。 私が昴の事好きだって教えたら絶対大騒ぎする。 これは隠しておかないといけないな。 息をつくと木元先輩がコーヒーを渡してくれた。 「あ、ありがとうございます」 「坂下の言うとおりだぞ。適度に息抜きしないと倒れる」 「大丈夫です、ご心配には及びません」 そう言うと木元先輩が困ったように笑った。 あきれ顔で私を見る真菜。 どうして二人ともそんな顔するわけ。 相手にしていると疲れるから気にしないようにして仕事を進める。 それからは二人とも話しかけてこなかった。 ・
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