13人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
だが、おかしな事だ。
玲奈が投げたのは、先程庭に落ちた人形だろう。
しかし、玲奈はこの女性を人形と同じ名で呼び、謝罪の言葉を述べたのだ。
「いいえ、驚かせてしまったのは私の方ですから」
大丈夫。と、ふんわり笑う女性も、平然と会話を成立させる。
「でも、琉兄に見てもらって。何かあったら困るもん」
「そうですね」
女性が頷き、玄関を上がると、琉の元へ向かう。
「悪かったな、菊。玲奈が馬鹿だから」
琉も女性を菊と呼び、自分の隣に座らせた。
バカとはなんだ。と憤る玲奈はスルーだが、琉もこの一連の流れのどこにも、違和感は無いらしい。
「私は平気ですけど、あの起こし方はやっぱり酷いですよ。あまり玲奈さんに意地悪しないであげてください」
「暇だからな。面白い事を求めたいだろ。それに、これも修行の一貫だ」
優しい苦言を一蹴して、琉は女性の背中に触れる。
.
最初のコメントを投稿しよう!