忘れてしまいそうな距離

3/6
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
→学校 M中、2年3組の朝は比較的早い。 私が登校した時には、もう10人程度の生徒は揃っている事が多い。 一応数人に挨拶したら、席に着いて早々にブレザーを脱ぐ。 だって、暑いから。 私にとって、黒のカーディガン(夏服ではベストになる)は制服のマストアイテムなので、いくら暑くても脱がない。 「実花佐、おはー」 そうこうしている間に、仲良くしている友人の朋夏が登校してきた。 実は朋夏とは微妙な関係で、最近ではあまり一緒に登校することは無くなった。 原因は3ヶ月前の仲違いであり、その際に朋夏は別のグループの子と仲良くなったらしいが、結局ハブられたので「仲直り」という形をとった。 まあ、女子ではよく有ることだ。 「おはよう。早いね今日は」 「あはは。今日は朝練をサボタージュしたから」 「……笑ってて大丈夫なの?あんた、副部長じゃなかったけ」 「大丈夫だって~。ジャクショーですからっ」 朋夏は、あははっと声を上げてまた笑った。 M中は部活が弱い。それは有名な話で、集会で表彰されるのは、せめて習字と作文位のものだ。 現に彼女の所属するバスケ部も、地区大会で負けた。 その事を問題視する生徒は今更いないだろう。 「あ~あ、こういうのはバスケの天才児とかが転校して来ないと変わりっこないしなあ」 ……一応、いたのか。 「朋夏はバスケ漫画の読みすぎだよ」 「む、反論出来ない…。最近も最新刊買っちゃったし」 「漫画は所詮漫画だよ。精進しなさい!」 「あははっ、はぁ~い!」 朋夏とは居ると楽だ。だけど、居なくてもどうにかなってしまうのは世の定め。 この子との縁は、そう長くは持たないだろう。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!