忘れてしまいそうな距離

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→昼休み 私の幼馴染みの佐々木晃弥は三週間前に交通事故に遭い、脚を骨折した。 幸い、あまり大きな怪我にはならずに済み、もう少しで退院だそうだ。 「へー、佐々木ももうすぐ退院か~」 「うん、来週末だって」 昼食を食した後ののどけさと戦いながら、私は朋夏に話す。 「晃弥が車に轢かれた時は、皆大騒ぎだったよねー」 「うんうん。クラスメイトが事故に遭うっていうのは、結構大きな事件だし」 朋夏はその時の教室の映像を今の教室に写し出すかのように、頬杖をついた。 あの日は、晃弥が出席をとる時間になっても来なかった。 担任は家から連絡を貰っていなくて、遅刻か否かを晃弥の友人に尋ねたが、友人も連絡は無かったそうだ。 まあ、たかだか遅刻だろうと担任は気にしなかったのだが、暫くしてから病院から連絡が入った。 『――佐々木君が車に轢かれた、って……』 担任の青ざめた顔。クラスメイトのどよめき。呆然とするしかなかった私が、その中に居た。 懐かしいと思える程の時間は重ねていないが、色んな意味で印象に残りざるを得ない出来事だ。 「ま、やっと佐々木も退院すんだから実花佐、あんたはお祝いしてやんなよ?」 「……あぁ、うん……」 私と晃弥は1ヶ月前から付き合っている。 だけど、正直それはノリというか話の流れからだ。 晃弥とは物心付いた頃には遊んでいたし、何だかんだで女子の親友よりも仲が良かった。 しかも晃弥は小学生の時は、男子に面倒な事に遭わされていた。 気が付けば、一番傍にいた人間だったし、恋人という関係になっても別に変化は無かった。 「……お祝い、ねぇ?」 ……そんな事を望まれているとは感じないのだけれど。 「どしたの?」 朋夏はそんな事情は知らないので、愚直に私と晃弥との関係を応援してくる。 特に意味があって内緒にしている訳ではないのだけれど、今更そんな話をするのも無粋な気がして、何となくそのままにしている感じだ。 いつか、嫌でも話さなければいけない時が来ないと良いと今は思う。
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