忘れてしまいそうな距離

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本当に、何故付き合う流れになったのか思い出してみようか。 授業は騒がしくしたがる男子、女子達が勝手に騒いでくれたので、先生もろとも脱線中だ。 追憶をするのに必要なのは、他人からの無関心さと時間のみ。随分お手軽なのである。 所謂、晃弥はいじめられっ子の部類にいた男の子だった。 だけど、容姿が悪いからとかいう典型的な物ではなかったし、簡単に言えば、力加減が出来ない餓鬼達の可愛い遊具にされたという感じだ。 無理してクラスメイトと盛り上がろうとしている晃弥が、私は心配で、だけど何も出来なくて、もどかしい思いをした。 だからというのも変だが、私は、近所に住んでいる晃弥とずっと一緒に帰っていた。それでからかわれることは何度かあったが、自然と暗黙の了解となっていた。 小学生というのは『お付き合い』に羨望するだけで、特に深い知識もない。そんな時代だからこそ、許されていた事だった。 そして、無事に私達は中学受験に合格し、近くの中学校に進学した。同じ小学校の子は晃弥と他クラスの村瀬望[むらせ のぞみ]だけだが、まあそこそこ馴染んでいる方だ。 しかし、中学生になってから晃弥は結構目立つタイプの男と化した。元々、社交性は備わっていたから、 やっと中学で本領発揮を果たしたのだ。 私は普通に帰宅部で、晃弥はサッカー部。これでもう一緒に帰る事は無くなってしまうと知った。 悲しいとか寂しいとか、そういう動詞では上手く表現出来ない不自然さを感じながら、私達はこのまま距離を広げていくのかと、私は悟っていたのに。 「付き合ってみようか、俺達?」 と言われた。 実際にはメールだったのだが、まあそこは現代っ子だから。 違和感があまり無かったことがつくづく不思議だ。 まあ、それも悪くない。私も今までに何度か恋をしてきたが、全滅していた。 特に晃弥とそういう色めき立った関係になる事を期待したことはないが、そこはもう怖いもの見たさというか。 ――うん。やっぱりノリだ。 「なに突然(笑)まあ、いいけど?」 そう、私は返信した。
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