忘れてしまいそうな距離

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だから私は、『好きだ』等と告白をされた訳ではない。 故に、私は未だに晃弥が何故、付き合おうと言ってきたのか知らない。 何となく、私と同じように離れていくのが悲しいと思ったのではないかと考えている。 私は晃弥の事を好きか嫌いかと問われたら、前者を選ぶだろう。 自惚れでなければ、晃弥も。 だけどそれは「付き合おうと言われたら付き合ってみる」程の物で、「付き合ってみようか」と思える程の物だ。 故に、居てもなんとも感じなくて、臨機応変に形を変える『好き』なのだ。 自己満足で、身勝手で、ただ自分を、相手を愉しむ為の関係。 これを私は敢えて、『純愛』と適当に呼ぶ。 幼馴染みだからこそ、私は晃弥を雄だとは思っていない。幼馴染みだからこそ、晃弥は私を雌だとは思っていない。 ……これ以上に不毛な『純愛』はあるのか。 ああ、つまらん。こんな回想は面白くないし、予想が多分に含まれているし。 もっと楽しい事が多いといいのに。 晃弥といる時間がもっと楽しければ、私はリア充っぽく頬を薔薇色なんかに染めて粘着質に語れるだろう。 私は時計を注視する。 あと10分。もう少ししたら今日は帰れる。帰ったら、晃弥とメールをする。 私の日々は実に単純に、規則的に巡る。 特に大したドラマは起こらない。 それが私の平和で、リアルだ。
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