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「…………」
何だろう目頭が熱いや、下手なフォローは逆に相手を傷つける。また一つ賢くなった……。
そんな馬鹿な事を挟みつつ書類を4分程で書き終える。
「終わりました」
「スッゴく書くの早いね! ご苦労様」
「まぁ、こういった書類は書き慣れてるんで。それとルーチェさん」
「レイナでいいよ」
「じゃあレイナさん……突然で申し訳ないんですが、その名前は偽名ですか?」
この学園で偽名は珍しくない、先ほど決闘したシャルルもおそらくは偽名だろう。
「そっちも偽名でしょ?」
遠回し(?)に偽名だと教えてくれたレイナさんは、自分の推理を確かめるような様子で聞いてきた。
「俺の方は本名ですよ、今生では」
嘘は言っていない。俺は翠月蒼時なのだから。
「君って昔からどこか食えない性格してるよね~」
「それはお互い様でしょう?」
俺はこの人を昔から知っている……いや、正確には知っているのは翠月蒼時ではない。
話は変わるがこの学園都市には面白い魔法がある。魂の記憶─つまり前世の記憶─を蘇らす魔法だ。
この学園都市の学園に入学するならば必ず受けなくてはならない魔法……。まぁ、無理矢理受けさせられるが。
しかし、魔法故に個人差が出てくる事がある。魔法の力は絶対でも万能でもないから。
中には全く魔法が効かない人もいるほどだ。
そして、魔法が効きやすかったり、魔法を無条件で受け入れられる人には前世の前世、つまり前ヶ世の記憶が蘇る事もある。
因みに俺は前ヶ世の記憶まで思い出してしまった。
俺の前ヶ世は……。
「……ん?」
そこで俺は異変に気がついた。辺りの景色が変わっていく。
そして気がつくと、そこには俺の前ヶ世に馴染みの深い場所になっていた。
円状の机に12脚の椅子。平等の象徴であり、俺達の象徴でもあった物。
「円卓…!?」
「そうだ、皆で囲み、笑い、作戦を立て、アヴァロン最強の12の騎士達が集った、かの円卓だ」
そこにはレイナ・ルーチェが立っていた。先程までの軽めの態度はどこにも無く、凛として落ち着きをはなっている。
服装は聖騎士を思い浮かべるような鎧を身にまとい腰には絢爛豪華な剣を吊り下げている。
「久しぶりに見たが、やはり似合っているな」
「……へっ!?」
そう言われ自分の服装を見る。
こちらもまた聖騎士を思わせる白銀の鎧を身にまとっていた。
そして思い出したかのように、身体がすぐさま片膝をつき頭を垂れる。まるで自分の身体ではない感覚だ。
「……お久しぶりに御座います、アーサー様」
……そう、これが偽名を使う理由。
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