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「《異能》、ですか……」
《異能》それは40年前に魔法と共に発見された能力。
異能は人間が生まれながらその体に…魂が宿している力。魂の形の具現化とも言われている。
そして、《異能》の能力は一つとして同じ物はなく、似たような能力は少なからず存在するのだが、全く同じ物は無い。
《異能》が発見される前は知らず知らずの内に《異能》を使っていたらしい。
だが少ししか力を引き出せなかったそうだ。
《異能》の発現には、先に語った魂の記憶を呼び起こす魔法と密接に絡み合っている。
あの魔法をもっと正しく言うのならば、記憶を呼び起こすのは副作用であり、《異能》を発現させるために必要な儀式と言った所か。何故かは知らないが、《異能》と前世は強く結び付いているようなのだ。このアーサー様のように。
「私の《異能》名は《王が望む理想郷》。この世界を〈此処〉に召喚する《異能》だ。発動条件は“王に足る”ことだ。まあ今のところ、この《異能》の使い道は対象を領域に引きずり込むくらいだがな」
……アーサー様は気付いていらっしゃるのか? 複数人を巻き込める領域支配系の《異能》はとても強力だぞ。
──まぁ、こういったモノは自分で気付かないと意味がないし、気付いているならそれはそれでいいか。
だから俺は、先程アーサー様が言った言葉の前半だけをすくい取り、聞いた。
「まぁ、詳しい事は省くと、円卓を召喚する《異能》ですか?」
「大雑把に言うとそんな《異能》だ。もっと別の使い方があると思うのだが。その姿を見るに、騎士達が関係がありそうだがな」
何かを思案するアーサー様、自らの《異能》について何か分かったようだ。
「私は、最強と唱われた円卓の騎士を探し出さなければならない、手伝ってくれるか? ランス」
「愚問ですよ、アーサー様」
『ランスロット』の心は初めから決まっている。
俺は無言でさっき生徒会室に来る前に借りた剣帯から剣を外し、剣をアーサー様に差し出す。
最初は少し戸惑った様子だったが行動の意味を理解したのか、俺が差し出した剣の柄を握り、凛とした声で俺に問う。
「私、アーサー・ペンドラゴンに絶対の忠誠を誓うか?」
「誓いましょう」
アーサーは無言で俺の肩に剣を乗せる、所謂騎士の儀式。
正確には騎士就任の儀。まぁ、随分と簡易版だが。
「これでまた、私の騎士になったなランス」
「はい。ではまず騎士ではないですがマーリンを捜しましょう。彼女…今は彼かも知れませんね」
「ふむ、マーリンか……」
「何か思うところでも?」
「いや、確かに他者の魔力を視れるマーリンがいたら捜索が楽になるかもしれないな」
「では、先ずはマーリン、次にベティヴィア卿を捜しましょう」
「何故ベティヴィアを?」
「一番探しにくいからですよ」
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