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「……つまりは?」
「ベティヴィア卿は隻腕だったんですよ」
「あぁ、そうか。今は両腕があるのか」
「と言っても、また隻腕の可能性もありますけどね」
「少々面倒だな」
「だからこそのマーリンですよ。マーリンなら残りの円卓の騎士の魔力を視て、判断出来るでしょうから」
「なる程……正直そこまで考えてなかった」
「考えてくださいよ!?」
「円卓の騎士達の収集や政、祭事は全部ランス達に任せてたからな」
なんと投げやりなんだろうか……。
やっぱり不安になってきた。
……アレ? 当時は黙々とやってたけど今思うとおかしくね?
だって政治や統括が王の仕事だよね? だったらこの人何やってたの?
「……つかぬ事お伺いしますがアーサー様。俺達が政をしている間、何をしておられたのですか?」
「鍛練だが?」
「……………」
俺は剣の柄に手をかける。
さて、突然だが騎士道とは何か教えよう。
善悪問わず、ただ黙々と主君に忠誠を誓うは騎士道に非ず。それは武士道と呼ぶ。
では騎士道とはなにか。主君に忠誠を誓い、主君が誤った道を進めばそれを正す、それが騎士道。
だから、俺は騎士道精神に乗っ取り、部下が必至に働いているときに筋トレにうつつを抜かす駄王に仕置きをしなければならない。
「あ、そ、そうだ! 確かめてみるのを忘れてた!!」
焦ったようにいきなり何かを言い出した。
一応大事そうな話のようなのでひとまず柄から手を離す。ジト目はやめないぞ。
「何をです?」
「私の《異能》の事だ」
そう言って、アーサー様は円卓の間のベランダの扉を開けた。
「……やはり!!」
何が、やはりだ。意味が分からん。
「説明をお願いできますか」
「そうだな、まず外を見てくれ」
外? ……キャメロットの城下町だな。
あの頃と同じ、全く変わらない、そのままだ。
もう現実には存在しない事を突きつけられた気がして、胸に寂寥感が押し寄せたが、無理矢理押し込める。……これは俺の感情じゃない。
「城下町が何か?」
「城下町もそうだが、もっと辺りを見ろ」
「辺りですか…」
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