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流石に痴話喧嘩に乱入するのは勇気云々以前に常識が有るので、会話の成り行きを見ていたら男─フィストだったか─の方が折れたのか、苛立ちながらもその場を離れていく。
短剣? を返すついでに道でも教えて貰おう、そう考えながら話し掛けた。
「ねぇ、この短剣、君のかな?」
「ん? あぁそうだが、見ない顔だな。…何故わかった? まさか貴様! わ、私のストーカーだな!!」
「……はぁ?」
この娘、何を言い出すかと思えば。
単に話し掛けただけだろう。
どれだけ自分に自信が有るんだ、まぁ、可愛いけど…。
さて、このまま誤解(?)させたままはよろしく無い。
てか初対面の人にストーカー扱いされたの初めてだ。
人生に一度もあってほしくない貴重な体験をありがとう、じゃなくて、さっさと誤解を解いて道を聞こう。
「違うよ。さっきそこを歩いていたらこの短剣が飛んできて、飛んできた方に進んだら君とあの強そうな人の会話が聞こえてきて、この短剣が君のだってわかったんだけど──」
「なっ…! 盗み聞きまで! 私の…いや、女の敵め!!」
「人の話しを聴けぇぇ!!」
「問答無用! 私、シャルル・エタンセルは貴方に決闘を申し込む!!」
「は?」
クッ…、思い込みが激しいのは薄々わかってたけど、まさかあんな大声で話していたのを誰にも聞こえていないと考えてるほどだなんて。てか決闘? 時代錯誤も甚だしいわ!!
内心バカにしたところで突然話しかけられた。今度はなに!?
「ふむ、やはり相手の名前も言わないとダメか……お前の名前はなんと言う?」
「翠月蒼時だ」
しまった!? 反射的に名乗ってしまった! 挨拶は礼儀だしね! 仕方ないよね!
「そうか……私、シャルル・エタンセルは翠月蒼時に決闘を申し込む!」
その瞬間、制服につけていた校章が青色に輝く。……決闘のルールは相手の校章を外せば勝ちだ。
原則として女子は校章を心臓の位置と真逆に付ける事、男子は心臓に近い場所に付ける事。
それが校章と一緒に送られてきた冊子に書かれていた。そう、決闘とか言うとち狂ったシステムは校則なのだ。
この学園は、いや、この場所では基本的に真剣を使うから、おそらくはオーバーキル対策だろうと思う、女子限定で。
男子の扱い方酷くない? 冊子の末尾には『男の子なら頑張って避けてネ(爆笑)』って書いてた。(爆笑)ってなんだ? 無性にイラってきた。
校章の原理についてのページには
『何故青く光るかって? 知るかそんなもん!』って書いてた。久方ぶりに殺意が沸いたよ。
俺、冊子を書いた奴が分かったら一発殴るって決めたんだ。
それにしても。
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