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side シャルル
「あ……」
この威力は大変な事になる。私は恐らく無意識のうちに制御に失敗した、いや必要以上に魔力を込めた魔法を打ち出したのだろう。
練習ならまだ笑える失敗だ、しかし実戦になるとそうはいかない。
この威力なら簡易結界を破ってギャラリーに被害がでるかも、いやその前に翠月蒼時が死んでしまう!!
「逃げ……!」
私の叫びはため息と凛とした声に消された。
「……翠月蒼天流刀術『水』の型、初の太刀〈雨水〉」
その瞬間、誰もが魅入られた。美しい太刀筋……まるで舞うよう巧みに剣を振るい、焔を消した。
私もギャラリーも、時が止まったかのように見とれたのだ、その美麗なる剣閃に。
そして焔が全て消え去った瞬間、彼の姿が霞と消えた。
「……えっ?」
余りにも流麗な光景に、眼を奪われて気がつかなかった。
いつの間にか翠月蒼時が私を抱えて飛んでいたのだ。
「なっ……!」
何をする! と言おうとしただが言えなかった。
翠月蒼時は、先ほどとは打って変わって、鋭い目つきで私が立っていた場所を睨み付けている。
場違いながら格好いいと思ってしまったが、すぐさま我に返り、私もそちらを見る。
──そして絶句した。
先ほどまで立っていた場所が抉れていたのだ。
地面を抉ったソレは、元々無かったかのように消えていった瞬間を私は見た。
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