日常

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空の青さを忘れぬように 今この時を忘れぬように 私は歌い綴ろう あなたの歌を綴っていこう 美しい歌声が村を包む。 大きな声で歌っているわけではないのだが女の声は村中に聞こえる。 歌っている女の名は私ことライム・ネルラーデ、村の外れに住む薬師だ。 「ライムちゃん。どこに行くんだい?」 八百屋のおばさんは陽気に声をかけてくる。 「リデル婆の家に薬を届けにいくの。」 「それなら、これも持っていってくれないかい?」 渡されたのは籠に入ったたくさんの野菜。 「届けてくればいいんですね。」 「そうだよ。後で家に寄ってくれ、とれたての野菜をあげるからね。」 「ありがとうございます。」 おばさんはウィンク一つして店に戻っていった。 おばさんと別れ、大通りから路地に入り少し歩く。 すると、リデル婆の家が見えてきた。 「こんにちは。リデルお婆ちゃん、いる?」 「おや、ライムちゃん。いらっしゃい。」 やさしく出迎えてくれるリデル婆。 「薬を持ってきましたよ。後、八百屋のおばさんから野菜。」 「こんなにかい?」 「うん。薬はいつもの所に置いておくね。」 「ありがとね。はい、代金。」 お金と包みを渡される。 「なんですか?この包み」 「おすそわけよ。」 リデル婆はニッコリと笑って言った。 開けてみると中には瓶詰のジャムが入っている 「わぁー。手作りジャムですか。ありがとうごさいます!」
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