無酸素ダイビング

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落ちてゆく彼の背は、いつもと変わらなかった。 私をわざとおいて行くように速く走り去ってしまう。 手を伸ばしても、届かない。 真っ青な海に消えた彼の背の残像を、崖の上からぼうっと思い出して涙した。 どうして押してしまったのだろうと後悔した。 悲しくて、悲しくて。 好きで好きで、仕方がなかったくせに。 彼がいなくなってしまっては、意味が無いのに。 後悔は一秒経つごとに、増していった。 だけど、もう全てが遅い。 暫くすると海の中から、ぷかっと彼の背が現れた。 すっかり変わってしまった彼の背は、手を伸ばしても届かない。 もう、彼の愛は永遠に手に入らない。 彼の愛に溺れることも出来ない。
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