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「天罰ってあるのかな?」
顔を腫らした少年が、草場に仰向けに転がり、空を見ている。有り体に言えば、喧嘩に負けたのだ。
「神様が仕返しをしてくれるのを、祈るつもりか?」
同じくアザだらけで、隣にひっくり返っている。見たところ、二人以外には人影はない。
何の特徴もない広場、自然がそのままと言えば、聞こえもよくなるが。
「いや、しても良いなら、自分の手でやるさ」
「まあ、そうだよな」
二人は喧嘩に弱くて、負けたわけではなかった。地元の有力者、その息子に怪我でもさせたら、家族に迷惑がかかるからである。
然りとて、黙って従うのも納得いかず、反抗しては殴られるのを繰り返していた。
「大人になっても、ずっとこんなのが続くのかな」
それは会話というより、呟きであった。高校に通っているうちは、嫌でも辞めるわけにはいかなかった。それが両親との約束だからだ。
何をやるにせよ、最低限の知識は絶対に必要だと言われた。卒業してからは自由にして良い。
その言葉を信じなければ、若者にはあまりに辛い日々だろう。
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