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やけに車体が重く感じられる。事実、極端に重量過多なのだろう。ノロノロと走るわけではない、つまりはエンジンも馬力が極めて高いのだ。
防弾車両。全てがそうだと言うわけではないが、中枢を抜くには兵器が必要になる。
「……」
面白くなさそうな顔で、今日も後部座席に背を預けていた。向かいには三十代前後の男が、視線を合わせないようにし、口を真一文字にして座っている。
友人ではないのは間違いない。親子にしては年齢が近い。
ボゴタの市街地を走り、高等学校へと横付けされた。車が到着するのに合わせて、待っていた同級生らしき者が集まってくる。
「お嬢、つきましたぜ」
「いちいち言わなくてもわかってる、口を閉じとけ!」
不機嫌な反応の被害者は、常に彼なのだ。だからと微塵も不満を感じさせない。
そのような役割にうってつけで、逆に言えば他には向いていなかった。だが仕事を割り振るのは上の責任であり、見事な部署を宛てたと称賛されて然るべき、そうともとれる。
ドアを開けると、取り巻きが頭を下げて迎え入れた。
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