陽気な兄弟の場合

2/14
1335人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
 ソ連が崩壊しても軍事的な背景を押し出し、分立した国家にロシア軍が沢山駐留していた。多少の違いは所属の名前と、軍服につけている国旗のデザイン位なもので、事実上は今までと変わらない。  帰国して少尉に任官した彼は、出身地の警備隊に配属された。地元との癒着や不都合よりも慢性的な将校の不足による、部隊の指揮能力向上を優先するような状態なのだ。  新任を別にして軍の人事も滞っていて、数年は昇進がストップしている有り様である。それだけならばまだしも給与も遅配されていて、士気の低下が著しい。  だからと犯罪には休みはなく、国防に終わりはない。誰かがやらねばならないのが現実で、燻っていない新任が気を吐くのもまた現実であった。 「軍曹、明日の警備スケジュールを打ち合わせるぞ」 「ダー」  自分の息子よりも年下だろう上官に従う。永年の習慣は感覚を麻痺させていた、自身より地位が少しでも上ならば誰の命令にでも迷いなく服従した。多くの者に共通している態度なのが問題であった。つまり上官が不正を働いても黙ってそれを手伝うのだから。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!