期待の後輩の場合

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 時は流れ、高校の卒業間近となった。幾度となく空を仰いできたが、全て明日でお仕舞いである。  過去の体験は、全てが明日への糧となるのが解った。それだけでも、人生の大いなる収穫だろう。  一度として屈することなく、ついに理不尽な境遇を堪えたのも、今では思い出である。 「遅いな……」  長年の友人と、今日も待ち合わせをしていた。ところが待てど暮らせど姿を見せない。  何か急用が出来た時には、度々すっぽかすことがあったので、深くは気にしなかった。  一人で帰路につき、自宅に戻るなり、母親が告げた。 「クォルシュ君のお母さんが、亡くなったそうよ」  今しがた電話があったようで、電話機の側に立ちながら、困惑した表情を見せる。 「俺、行ってくる!」 「ご迷惑になるから、すぐに帰ってらっしゃい」  言葉を半ば聞かず、彼は駆け出した。どうにかなるわけでもなく、ただ居ても立ってもいられなかったのだ。  二十分程も走ると、目的の場所に辿り着く。肩で息をしながら、ざわつく人を掻き分けて、中へと入って行く。
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