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「好きだ、俺のものになってほしい。」
そう言われたのは日の暮れた科学準備室だった。
水無月先生、27歳。
僕の通う男子校の科学の教師だ。
そして、僕の担任の先生でもある。
放課後の科学準備室に提出物を出しに来た僕は、窓際の椅子に座り何かを書き綴っている先生に会釈をし部屋を後にしようとした所で腕を捕まれた。
それは、突然の告白で未だに状況が飲み込みきれず僕は胸の動機を抑えることに必死になっていた。
先生は頭がよく、かっこよく、でもどこか冷たい眼差しで生徒には冷たい。
付けられたアダ名は白衣の鬼畜。
僕はただ、すらすらと黒板に科学式を綴る先生の整った凛々しい横顔に憧れに似た感情を抱いていた。
でも、今。
僕を後ろから抱き止めている先生は、鬼畜でも、凛々しくもなく、新鮮すぎる程にいつもと違う雰囲気を醸し出していた。
そんな先生は、せつなく、綺麗で、どうしたら良いのか分からない。
ただ、分かるのは、僕の普通じゃない程の鼓動と先生から注がれる熱のこもった視線、白衣から香る薬品の匂い、僕を捕まえて離さない力強い腕。
「源田?」
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