プロローグ

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「もーうーーならーぞーーしい」 誰かが苦しそうに何かを言っている。 男だ。 全身黒ずくめの男の服は、所々破れていて、男が倒れている荒野は男の血で染まっていた。 黒髪で、病的なまでに白いきめ細やかな肌、目は金色に輝いている。 その男は禍々しいまでに美しかった。 男は今にも息絶えようとしていた。 ・ 私は男の命が尽きる前に伝えねばと口を開いた。 「ならーいーではーわーかーーわ」 私の言葉が届いたのか、男は笑顔と言えば不敵な笑顔しか浮かべたことがなかった、その端正な顔に嬉しそうな、本当に嬉しそうな、けれども、儚い笑顔を浮かべた。
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