喜"怒"哀楽

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歩く。住宅街を抜け、商店街に差し掛かる頃には、疎らだった人の数も増え、視界を埋め尽くす。 何に追われているのか。人々はその歩みを止めない。時間以外には無関係なそれはまるで機械だ。脇目も振らず、ただ前だけを見据えている。だが、その眼光は灰の様にくすんでいて、光は宿っていない。 何の為に、何故、どうして。 生きている意味を模索するのを止め、意義は求めず、ただ流されるままにその日その日を歩いて行く大人たち。 俺もいつか、思考を止めてしまうのだろうか? いっそ、その方が何倍も楽に思える。きっとそうだろう。 この街に、この世界に落胆することも、悲観することもなくなる。 喧騒を抜けて坂道へ。登りきった先には何もない。何も。いつも通り、見栄っ張りな馬鹿と、横暴な大人たちが割拠する校舎があるだけだ。 ため息をつく。憂鬱が俺を襲う。 友達なんていない。それは別に構わない。ただ、ここに来た所で奇異な目で見られたり、俺を利用しようと馬鹿が近付いて来たり、いいことなど何一つないのだ。 それが解っていても、たまにここに来る。その理由を俺は知らない。否、探そうとしないだけ。何故、それをしないのかも、考えはしない。 存外、俺の思考が止まるのも時間の問題に思える。そう考えると、少し笑えた。
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