喜"怒"哀楽

5/12
前へ
/120ページ
次へ
大体多数の人間は腫れ物を触る様に扱うこの場所の居心地は悪い。が、中には歩み寄って来る者もいる。それは、クラスの中でも浮いた存在で、髪は脱色し、耳は勿論、口や鼻にまでピアスを開けた所謂素行不良な人間。 「秋森、久しぶりじゃん」 欠陥品の様な顔が口元を歪めながら喋ることで更に醜く映る。返す言葉等ない。シカトだ。 「相変わらずツレねえな」 そう言って、俺の元から去っていく。奴から言わせると、俺はダチらしい。友達、アホらしい。ろくに会話もせず、学校に来なかった間を特に心配する訳でもない。只、学校というコミュニティの中で立場が一緒なだけ。それだけで、ダチになるそうだ。まだ、群れと言った方がしっくり来る気がする。 苛つきが増す。何がダチだ。つい二月程前まで奴らのダチだった一人は、くだらない理由で疎外され、今では転校してしまった。 チョーシに乗っている。それが理由なのだそうだ。何がダチか、そんなうわべと建前だけの関係に、俺を混ぜてくれるな。吐き気がする。 「おい」 そう言い、ゆっくり立ち上がる。あ? と、間の抜けた声と一緒に奴が振り返った時に、思いっきり殴ってやった。 「てめぇ何すんだよ!」 吠える。耳障りだ。こいつの声も、周りの喧騒も。 「お前の顔を殴りに来ただけだ」 そう言い、もう一度殴ると呆気なく失神した。それを確認すると、俺はさっさと帰路についた。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加