喜"怒"哀楽

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「おい」 帰路に着く中、奴等は唐突に現れた。あと少しで家へ着くというのに、全く。面倒だ。俺は囲まれていた。人数は八人。俺に声を掛けたのは、朝学校で殴りつけた奴だ。その他の取り巻きは、隣の中学の奴だったり、後輩であったり、同級生であったり。 「お前、チョーシにのってんじゃねえぞ、あ?」 頬を腫らした馬鹿は語彙が少ないのか、御決まりとも言える台詞を俺に向かって叫んだ。誰がだ? 一人を相手に多人数で囲まなければ何も出来ないのだろうか? 群れの中から吠えたところで、俺には届かない。 「ちょっと、面貸せや」 そう言って近づいてきたそいつを、俺はすぐに殴った。突然顔面を殴られ、怯んだ馬鹿を逃さず、襟首を掴み、引寄せ、もう一度殴り、そして両手で首を締めた。 「かっ、はっ!」 息苦しさに喘ぐ馬鹿を尻目に、俺は淡々と取り巻きに向かって告げる。 「帰れ。今すぐ。じゃないとこいつを殺す、此処で」 抵抗も弱り、顔が土色になってきた馬鹿を見て、取り巻きの一人が慌てて言葉を紡ぐ。 「解った! だから、先にそいつを離してくれ」 「無理だ。消えろよ、今すぐ、俺の視界から。そしたら離す」 そろそろ限界か。辛うじて聞き取れた馬鹿の言葉は助けてだった。それもこれもお前の連れてきたダチ次第だ。 「イカれてやがる!」 そう口々に叫ぶと、取り巻き連中は逃げ出した。それを見届け、手を離した。胸を押さえ、必死に息を吸っては、えづき、吐瀉物まで出す始末。俺はそいつの顔面を蹴りあげた。
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