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イカれてやがる。取り巻きが叫んだ言葉が妙に胸に仕えながら、俺は歩いていた。確かにそうだ、そうだろ。人を殺す。それに、何の躊躇も沸かなかった。イカれている。でもどうだ? 俺やあいつも含めて、これから先。俺たちは何が出来る? 頭がいい訳でもない、礼儀も知らない。社会に貢献する処か害悪でしかない。ならいっそ死んだ方が。
そんな馬鹿な理屈を盾に罪悪感を完全に拒絶する俺は確かにイカれている。そんなことを考えながら着いた場所は、あの犬がいる河川敷だった。
自転車が三台駐輪されていた。河川敷に降りると、犬がいる方向で騒ぐ奴がいた。
「やべーな! それ!」
「だろ? 塾で成績トップ取ったから親に買って貰ったんだよ」
あまり詳しくはないが、やたらでかいエアガンを手に、うちの中学の制服を着た連中がはしゃいでいた。が、俺が近づくとすぐに空気が変わる。
「やば、秋森だ……」
誰かが呟くと、こそこそと逃げていく。
その先に俺は死骸を見た。恐らくあのエアガンで何度も撃たれたあの犬の死骸を。近くには、血がついた礫も転がっている。思わず、乾いた笑いが零れる。楽しい訳じゃない、嬉しい訳でもない、では何故? 解らない。が、その答えを考える余裕なんてなかった。
イカれてる。
そうだ、そうだろうよ。だが、存外それは誰にでも当てはまることなのかもしれないと、俺は拳を強く握りしめた。
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