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純也、純也と聞き覚えのある声が膜が掛かった様に薄く聞こえる。おまけに泣いている。煩い。鬱陶しい。静かにしてくれ。意識が在るのか無いのか、よく解らない状態で、ひたすらに俺の名前だけが連呼される。不快だ。と切り捨てたい一方で、何故か安穏を得ている自分が不思議でならない。別にどうでも良かったんだ。それこそ殺され様が。
人が言うように、死んだら死後の世界ってのが本当にあって、其所でのうのうと暮らすのか。それとも、人が言うように死んだら完全に無なのか。確かめた所でどうにもならない事を確かめようとしてた程、どうでも良かった。が、全てに無関心である事は生が赦す事はなく、やがて激痛と共に意識ははっきりと表に浮き上がった。
眩しくて目を開けられない。漸くそれに慣れた頃には見知らぬ天井が広がっていた。清潔な白い天井だ。今一状況が理解出来ずに辺りを見回す。首も痛い。煩わしい。
やがて見つけたのは、五年か十年か。一気に老け込んだと思える程しわくちゃに顔を歪ませた母の顔であった。
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