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純也! と、更に顔をしわくちゃにして母は俺に抱きつく。反射的に、痛みを訴えると、母は謝りながら俺から離れた。
「ごめんなさい」
そう言い、項垂れる母。口の中が、口内炎だらけで腫れて上手く舌を回せずに、俺は押し黙る。やがて、見回りにきた看護婦が、俺を見ると慌てて先生! と、医者を呼びに行った。暫くし、担当医だと名乗る中年の医者が来て、俺が三日三晩寝ていたことや、折れた、ヒビが入った骨の箇所、検査の結果脳に異常はないこと等淡々と告げる。どうでもよいが、無事な部位の方が少ないのではないかと、多少うんざりした。そして、最後にこう言い残していった。
「お母さん。ずっと君の側にいて心配していたよ。ちゃんと、お礼は言っておきなさい」
そう言うと看護婦を連れて、気恥ずかしそうにしている母と、それこそ映画に出てくる陳腐な悪役の様な全身包帯男の俺を残して病室から去っていった。
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