秋森純也

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自室の、小さな引き出しの中にそれをしまう。ふと、天井を見上げた。染みだらけの汚く狭い天井だ。 そこが、俺の家で俺の帰る場所なのかと、己に問いかける。いや、違う。答えはすぐに出た。吐き気がする。 立ち上がり、部屋の立て付けの悪い引き戸を開けると、真っ正面に申し訳程度に備えられた台所を迎え、その間にテーブルがある。 その上に置かれた灰皿には吸殻が山を作っている。煙たい空気の向こうについ3ヶ月程前から家に居座る不動産屋の男。名前は確か……工藤、いや佐藤。さして興味もない。 所謂、お義父さん。不快極まりない。吐き気がまた俺を襲う。 その男もまた俺に興味なく、だが体裁的に、どこか行くのか? と、せわしなく貧乏揺すりをしながら問いかける。 「関係ない」 それだけ言うと、テーブルの上の煙草をひったくり家を出る。 背中越しに聞こえた、俺の煙草! って声が酷く耳障りだった。
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