憧れを探しに

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「純也」 一言一句噛み締めるかの様に母は俺の名を呼ぶと、突如俺に向かって頭を下げた。 「ごめんなさい」 と。未だ霞がかって上手く回らない頭にその言葉の意図は読み取れない。が、そんなのはお構い無しに、昼行灯になっている俺に母は続ける。 「貴方が言ってた物、私は今さら何一つ用意出来ない。貴方の人生に口出しする権利もない。でも、聞いて。私は純也が心配なの。だから、せめて高校には行って欲しいと思う。大丈夫、心当たりもあるし、どんなに汚い手を使っても行かせてあげる。それが、余計なお世話なんでしょうけれど、これが最後。もう貴方が嫌うことだってしないし、私の事が嫌いなら成人したら縁を切っても構わない。でも、それだけは。私の務めだけは果たさせて」 やたら饒舌に語った後、目に涙を浮かべながらも、力強く母は俺を見据える。最早、反抗する気力も今はない。頭を支えるのが辛かっただけだと、意味のない言い訳を自分に言い聞かせながらも、俺はゆっくり頷いた。
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