秋森純也

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家を出て、あの男から盗った煙草に火をつけた。苦くて渋みがかった煙を吐く。相変わらず、不味い。 吐いた煙を追いかける様に天を仰ぐ。どんよりとした曇り空。灰でも降りそうな天気に舌打ちをして歩き出す。 途中、コンビニに寄って食パンを買う。 店を出ると、再び歩を進める。暫く進むと、土手に出る。 そこから見える鉄橋へと向かう。河川敷は葦や雑草が刈り取られ綺麗に整備されている。だが、その土の上には錆びた空き缶や、潰れたペットボトル、ぼろぼろになった成人誌なんかのゴミが散らばっている。 後ろから、錆びた鉄の悲鳴が聞こえる。それは俺を追い越し、軽快にペダルを漕ぎながら、何の抵抗もなくそこに空の缶を投げ捨てていった。 俺はそれを拾う。だが、それでここが綺麗になる訳じゃない。理解している。だからこそ余計に腹が立ち、もう届く筈もない遠くなった影に向かって、おもいっきりそれを投げつけた。
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