秋森純也

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耳に響く電車の騒音が不愉快だ。鉄橋の下、田舎とは違い頻繁に往き来する電車の音の下、俺は柴犬と何かの雑種の子犬の頭を撫でる。 こいつはずっとここにいる。 生まれつきか、事故か。理由は知らない。こいつは関節から下の右の前足がない。だから捨てられたのだろう。 2ヶ月程前に偶然見つけた。その時は、餓えからか酷く衰弱していたのを鮮明に覚えている。偶然持ち合わせたパンをやったら、すぐになついた。それ以来放って置けず、ちょくちょく世話を焼きに来てる。 すっかり慣れたのだろう。早く餌を寄越せと、出来ないお手の代わりに頭をグリグリと俺に擦り付ける。 そんなに焦らなくても今やるよ。と一人呟き、先ほど購入したパンをやる。嬉しそう……なのか? よく解らないが、それっぽい表情で、食事を始めた犬をボーッと眺めてた。
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