秋森純也

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知らないことばかりだ、俺は。でも、俺の視界にはどんよりとした曇り空が、何処までも広がっている。空気は吸う度に肺を圧迫する。少し温くて湿っていて、そして仄かな臭気。吐き気を催す。街に出れば行き交う人、人、人。香水の匂いや整髪剤の匂い、体臭や排ガス。それら全てが混じった匂いを嗅ぐと、咽が漏れそうになる。耳に響くのは主にクラクションと雑踏。俺の部屋での寝覚めは、電車の騒音か。それはまだ幾分マシだ。母親の喘ぎ声か、酒飲みの怒鳴り声。ああ、不快だ。 他人なんてファミレスの店員の笑顔と同じくらい信用してない。 不快で、不満で、不安だらけの毎日。 俺は俺が視認しているこの世界が大嫌いだ。俺は馬鹿だが、それだけは知っている。 この世界は、汚い。
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