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「お久し振りです。」
暁良が応接間へ入ると同時に、客人はそう言って深々と礼をした。自分と同じか少し上くらいの年齢だろうか。高価な物こそ身に付けてはいないが、身なりはしっかりとしていてどこか品がある。
しかし、こうして間近で会ってもなお暁良は客人を思い出せずにいたが、客人はそんな彼を怒ることもなく代わりに柔らかな笑みを返した。会ったのは一度きりですから、と。
応接用のソファに互いに腰掛けたところで、客人――宮部誠が用件を述べた。
「これを、お渡ししたかったのです。」
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