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ここはどこだろうか、光りと呼ばれるものはロウソクの火だけ。
ロウソクの火はユラユラと揺れ辺りを照らす。しかしその微弱な光だけでは、ここがどこなのかを判断するのは難しい。
しかし確認できることがいくつかある。
1つ。1人の20代の男性が敬意を表すように頭を下げていること。
1つ。男性と同じ年代の可憐ともいえる白髪の女性が、高価な椅子に腰を掛け男性を見下ろしていること。
「顔をあげなさい。晋」
女性の透き通るような声での命令。
晋と呼ばれた男性はゆっくりと顔をあげる。
晋の髪は青く、胸のあたりまで伸ばされている。身長は180㎝に近い。
そんな男性を女性はいまだに見下ろしている。これだけで段差があることは明白だ。
女性は晋の顔を見てクスッと笑う。
「どうかしたの晋。とても不機嫌そうに見えるのだけれど?」
「いえ。不機嫌ではありません。ただ貴女から直々に呼び出されると、必ずと言ってよいほどに、厄介な仕事だったと記憶しているので……」
晋は一応否定の否定の言葉を投げたが、睨みながらでは全く説得力はない。
しかし女性はクスッと笑い「そう」とだけ答える。
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