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「戯け悪党めが!!貴様は御国の為に忠を尽くせぬのか!?この苦境の時で有るからこそ、臣民一同皆で団結し、御国を護ろうとは思わぬのか!?」
男の信念に満ちた目に射抜かれようとも、娘…涼華は怯むこと無く、寧ろ年相応に高く、鶯の如く清純であり可憐な声を荒げ、男を真正面から見据える。
「真に御国の為を思うのならば自由思想だ、護憲だと声高に主張する前に御国の危機に立ち上がるべきでは無いのか!?」
「それでは何も変わらぬ!!政府は我らを構いなどせぬ。なれば我ら民の力で変えるしか無いのだ!!」
男はその懐より短銃(たんづつ)を抜き、その火口を涼華に向ける。
火口は涼華の心の臓を向き、引き金を引けば寸分違わずその胸を射抜き、撃ち殺してしまうであろう。
しかし、涼華は只の少しも驚く事も恐れをなす事も無く、男を正面から睨み付ける事を止めない。
「戯け者めが…政府ではなく御国のことを考えぬか。貴様は帝国の臣民であろうが。」
涼華が己が懐に手を入れ取り出したのは、鉄で作られた十手(じって)である。
涼華は十手を短銃の火口に合わせるように構える。
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