キャンバスに咲いた花ー短編小説ー

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どうしようもない絶望感が取り巻く――。僕だけが取り残され、嘲笑われているような気分の悪い感覚。この世界は常にどこか壊れ続けているのに、僕だけが壊れている、狂っていると錯覚する。そして実際、僕の中は狂っているのだ。 病院は本当に味気ない。何もない。ただただ、真っ白な壁がどこまでも続き、永遠にこの白い檻から出られないのではないかという気を持たせる。ちょうどベッドで横になると、白い天井が見えるのだ。廊下からは子ども達のはしゃぐ声や、看護師が動き回る音がしているけども、僕の周りでは医療機器の音しかしなかった。手を動かし、鉛筆を握る。あらかじめ用意されていた紙に、手をそっと乗せた。まだ真っ白な世界に、僕が黒い炭で描いていくのだ。この病室で唯一、オリジナリティが現れる場所はこの紙の上に制限されていた。僕が今日描いたのは、一輪の花。何の花か分からない。この前、誰かが持ってきてくれた花束の中に1つだけあった花なのだ。1つだけ仲間はずれだというように、色も形も違う花が紛れ込んでいた。しかしその花は、自分は他と違うということをむしろ誇りにすらしているように凛と、気高く咲いていた。だからその花は印象的だった  
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