キャンバスに咲いた花ー短編小説ー

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ある日、僕のベッドの横に新しいベッドが追加された。しかしそのことはすぐに忘れてしまうので、僕は毎日ベッドが追加されていることに驚いていた。しばらく経つと、僕の横には誰か来たようだった。新しい入院患者だ。今まで僕の病室には誰もいなかったから、話し相手が出来るかもしれないという期待で胸が膨らんでいた。 「こんにちは。起きていますか?」 第一声、僕がそう声をかけるとすぐに声が返ってきた。 「うん、起きてるよ」 声の相手は女の子だった。すぐに女の子はカーテンを引き、僕に顔を見せた。女の子の顔を見た僕は、言葉を失ってしまった。生きている人間とは思えないほど青白く、か細い体だったから。僕と同い年ほどの女の子で、目が大きくて、きっと元気な頃は可愛かったんだろうな、と窺わせる容姿をしていた。 「何の病気なの?」 僕も患者なのだから、遠慮はいらないと思って病名を尋ねてみた。女の子は強気な声で、 「別に言わなくてもいいじゃない、私はすぐにここから退院するんだから。あなたとはもう少しでお別れ」 と、得意げな表情で言うのだ。そうか、そんなに病弱な外見なのに、すぐ治る病気なのかな?僕の方が重い病気であることを知り、また悲しくなりそうだったけど、悲しむ余裕もないほど女の子はおしゃべり好きだった。
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