元王女様の場合

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そんな風にセンチメンタルになっていると、玄関のチャイムが鳴った。 ここでぼくがする選択はたった一つ。 部屋に置いてある家庭の医学を手に取り、ドアの死角に立つことだ。 玄関まで行くなんて危険な行為を、ぼくがするはずがない。 今の時刻は、午後2時ジャスト。 ちょうどアイツがやってくる時間帯だった。 案の定、鍵がかけられているはずの玄関が開く音がして、アイツは階段を上ってくる。 一段一段ゆっくりと近づいてくる足音にぼくは息をひそめた。 どんなとこに隠れても居場所がバレるのは、ぼくの人生15年間で学んだ。 軽くホラーだった。 いや、夜だと冗談抜きでホラーだった。 だから、ぼくは鍵をかけた自室のドアが開きアイツが部屋に入った瞬間。 力の限り家庭の医学を振り下ろした。
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