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しかし、家庭の医学は不法侵入者がクロスした腕によって阻まれる。
その奥にある深い夏色の瞳が嬉しそうに細められ、ぼくはゾッと鳥肌が立った。
ぼくはすぐに家庭の医学をそいつに向けて放り投げ、新たに生物辞典を手に取って窓辺まで距離をとる。
そいつは長い金髪をフワリとなびかせてぼくの部屋へ堂々と侵入してきた。
そしてぼくの目の前で跪いて、いつもどおりのセリフを言うんだ。
毎回毎回、ぼくはこの瞬間が苦手だ。
このキラキラとした瞳が昔から苦手なんだ。
「もう!勇者様ったら恥ずかしがり屋なんですから!でもいいんです。ワタクシそんな勇者様も愛してますから!この腕の痛みも勇者様からいただいた大事なものです!さぁ、その手に持ったものでワタクシをもっとお殴りになって!」
「全然恥ずかしがってないから!むしろ怖いわ!」
恍惚とした表情で夢見る乙女のように目を輝かせている、目の前の『青年』は残念な言葉をその爽やかな美声で紡いでいる。
この変態。
見た目は外国人モデルのように整っているのだが、興奮すればカマ口調(というかお嬢様口調)で痛めつけられることが大好きなマゾだ。
そして、ぼくのことを勇者と呼び続ける人達の一人だ。
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