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だからといって、ぼくが勇者だったと認めるのはおかしいと思う。
もしかしたら、本当にそうなのかもしれないけれど。
でも、ぼくは否定させてもらう。
顔だってどこにでもいるような普通な顔で、みんなの言う『勇者』って感じじゃないし。
それに記憶喪失だって言われる人たちは、前世で身近にいた人たちに会うと懐かしく感じるらしいのだ。…たとえそれが、僅かな感覚であっても。
だけど、ぼくにはそれがない。
一緒に旅した仲間だとか、元家族だとか元恋人だとかが会いに来たけど、
ぼくは、ちっともなんとも思わなかった。
知らないのは知らないのだから、しょうがないとは思うけど。
むしろ、今のぼくを見てあっちが勝手に失望したり怒ったり悲しんだりするのが殆どで、
時には憎悪すらむけられた。
特に女の子に。
彼女たちは『勇者』を愛していたそうで、その気持ちがあった分反転した想いはすごかった。
それは間違えられてる以上、もう仕方がないことだけど。
まぁ、ぼくが言いたいのは記憶喪失じゃない可能性が高いってことだ。
なのに、
目の前の『王女』だった青年のように、人々はぼくを『勇者』だというのだ。
正直、放っておいてほしい。
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