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「あにさまのいけず」
体勢を整えて、ベッドの上で品を作る亜梨珠。小指を唇で噛む様は妙に色っぽいのだが、所詮は妹だ。欲情なんて…してはいけないのだ。
「お前はその無駄な色気を同級生に使うべきじゃないか?恋人が出来たら祝福してやっからよ」
だが、智の言葉に狂った様に笑い出す亜梨珠。
「いひっ!あひゃひゃひゃひゃひゃ!われがあにさまいがいのおのこと!?ありえぬありえぬあってはならぬ!このかおも、このからだも、われのこころも、うまれたときからあにさませんようのものだもの!」
「あー、はいはい、妄想乙。昔は言う事聞く良い妹だったのに、どーしてこうなったんだかな。母さんに一度相談してみねーとな。お前も早く着替えて学校行く仕度しろよな。遅刻すっぞ?」
そう言って智は部屋から出ていった。彼の部屋に独り残される亜梨珠。
「いひっ。もうそうではない。あにさまはまだめざめておらぬだけ。いずれわかる。われがあにさまのよめだということが。あにさまとわれはあらたなるあくまのせかいのしはいしゃとなるのじゃ」
こうして亜梨珠は日課の「あいするあにさまとのからみあい」をこなし、着替える為に自分の部屋へと戻るのであった。
「母さん」
「んー…なにー?」
パンにジャムを塗りながら言う智の呼び掛けに生返事で答える母の百合子。茶髪のポニーテールに細い目付き、そして豊満な肢体。何処と無くヤンキー臭い雰囲気の妙齢の女性である。そんな彼女は爪にグロスを塗っていた。
「亜梨珠さぁ、何とかなんないワケ?毎朝俺の上で妄言を繰り返して…。もう良い年頃なんだからさ、兄離れすべきじゃないかな?」
すると百合子は口元に笑みを浮かべて言った。
「智君は妹に好かれるのが嫌なの?」
「好かれるとかそういうレベルじゃねーよ、アレ。兄を男として見るのはどうかと思うんだが」
すると百合子は母親にあるまじき発言をする。
「別にいーじゃん。好き合ってんならどうぞ御勝手に。アタシゃ二人が合意と覚悟の上で禁忌の道を歩むなら祝福してやるよ」
「ちょ、母さん…っ!」
何を言い出すんだこの人は!言い返そうとした時に亜梨珠が現れた。
「かかさまさすがわれのきもちをわかってる。だからすきじゃ」
そう言って百合子に抱き付く亜梨珠。
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