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足元に広がる果てしない暗黒空間。
「…………」
そのブラックホールのような闇を前に、小泉の足が震え出す。
いつまで経っても足を踏み出さない様子に、淀谷が声を掛ける。
「どうした小泉。まさか、怖じけづいたか?」
「…………」
「……しょうがない奴だ」
「…………きゃっ!?」
声を発した時には、小泉の体は闇の中に浮かんでいた。
その背後には、手を前に突き出す淀谷の姿。
「ああああぁぁぁ……」
断末魔ともとれる叫び声を上げながら、小泉は闇の中へと消えていった。
その様子を左側の窓から覗き見ていた生徒達が騒ぎ出す。
「落ちた!?」
「嘘だろ! なんで地面が無いんだ!?」
「おいおい……。冗談が過ぎるぞ」
闇へと突き飛ばした張本人の淀谷も、動揺を隠せずにはいられない。
「か、香…………。かおりいいいいっ!」
消えた小泉の後を追おうと、淀谷を押し退け降り口へと向かう港。
その時だった。
『今をもって、決定した』
どこからともなく、男と女がハモったような声が聞こえてきた。
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