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バスから伸びるように続く、細く、長い一本の道。
その道の先は陽炎が立ち上るが如く、霞んでいた。
後方の窓から外を覗けばそこに道は無く、ただ赤と白の空間が広がるのみ。
つまり、道は一方通行だった。
「ここがハザマの世界!? ふざけんなよっ!」
「夢よっ! こんなの夢よ!」
「帰してくれよ! 俺も小泉みたいに家に帰してくれよおおっ!」
信じがたい光景を見せ付けられ、車内はこれまでで一番騒然としていた。
「はーっ、真っ暗の次は真っ白かよ。いい加減にして欲しいぜ」
そんな中、窓の下を覗き独り言を呟いた浜崎 歩(はまさき あゆむ)は、後ろの席に座る川合 直(かわい なお)に尋ねた。
「なあ直、こっから落っこちたらどうなんだ?」
「私が知るわけないじゃない……」
「んじゃあよ、これ投げて試してみようぜ」
そう言って浜崎が鞄から取り出したのは、握りこぶし程の大きさのツルツルした石。
「なにそれ。石?」
「ああ。二日目に行ったお寺に奉ってあった触ればご利益があるって言われてた有り難い石だ。勿体ないけどゴミを捨てて罰が当たるよりはマシだろ」
「もう十分罰当たりな気がするんだけど!? ってかこうなった原因、もしかしてアンタのせい!?」
その大声に、騒然となっていた車内は静まり返り、周囲の生徒の視線が浜崎と川合に注がれる。
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