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「運転手さん、発進できそうですか?」
「いやあ、なんとも……。ちょっとお待ち下さい。今、確認してみます」
港にそう言って運転手は席から立ち上がると、降り口へと向かった。
その足元には先程まで見えなかった黄土色の地面があり、手すりに掴まりながら恐る恐る運転手はその地に足を着けていく。
地面に体重を乗せ、降り立てる事が分かると、運転手はバスの周囲を見て回った。
周囲の地面はフラスコ状に形成されており、先に行けば行く程、道幅が狭くなっている。
それを確認すると、運転手はバスへと戻った。
「残念ながら、バスでこの先に進むのは無理みたいです」
「そうですか……」
前に進めない事が分かり、一同の不満と不安は再び爆発した。
「じっ、冗談じゃねえよ! 早く発車してくれよ!」
「そうだよ! こんなとこ1秒もいたくないよ!」
「いやいやいやっ! 帰りたい帰りたい帰りたいっ!」
少し焦るように港は周りよりも更に声を張り上げ、皆に呼び掛ける。
「静まれみんな! 香は帰れたんだ。僕らだってきっと帰れる!」
「そんな保証無いわ!」
「そうだ! あの映像だって本当なのかどうか分からないしな!」
「だから冷静になって、みんなでこの状況を打破する解決策を考えて--」
「猛、こんな状況で冷静になれってほうが無理だ」
そう言って港の肩に手を置いたのは、港の親友である杉浦 悟(すぎうら さとる)。
「そうだぜ委員長。それにいくら考えたって解決するわけないって!」
杉浦に続いて発言した浜崎は、席を立ち上がり皆に向かって言った。
「なあみんな。この道、歩いて行ってみねぇか?」
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