生者の行進

6/37
前へ
/412ページ
次へ
「いよーし、これで五人だな! 他にいねぇか? いなきゃ置いてくけど」 「待ちたまえ浜崎君、僕を差し置いて勝手に話を進めないでくれないか」 「なんだ委員長も行くか? 心配すんなって、置いてかねぇから!」 「そうではない!」  一瞬声のボリュームを上げた後、すぐに元のトーンに戻し港は話を続ける。 「僕はクラス委員だ。僕にはみんなを無事に家に送り届ける義務がある。だから、ひとりの勝手な行動は僕が許さない」 「んだよーっ。じゃあ委員長、外出許可くれ」 「歩、あんたちょっと黙りなさい」  しかし、次の港の発言で事態は展開を見せる。 「……だが、僕も浜崎君の意見に賛成だ。このままここにいても助けが来るとは思えない」 「さっすが委員長! 委員長になっただけの事はある!」  嬉しそうにバシバシと背中を叩く浜崎に、顔色ひとつ変えず港は告げる。 「浜崎君。みんなに10分だけ考える時間をくれないか? まだこの状況を受け入れきれてない者が多数だ。ちゃんとみんなに、気持ちの整理をつけさせてやりたい」 「ああ、俺もできれば全員で行きてぇしな。待つぜ!」 「運転手さんと、青山さんもそれでいいですか?」 「あ、ああ。いいとも」 「ええ」  運転手とバスガイドの青山 遥(あおやま はるか)も、首を縦に振った。
/412ページ

最初のコメントを投稿しよう!

796人が本棚に入れています
本棚に追加