闇に浮かぶ箱

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「ほうら、明るくなったよ船越君」 「ん~、もっと抱きついてたかったのにぃ~」 「司! いい加減離れなさいよ! もう! なんで私が隣の時は真っ暗にならなかったの!?」 「入江! さっきはよくも私の胸を……!」 「え、やっぱり胸だった? いやあ、もうけもうけ」 「くそう、間違って魚住の触っちまった……」 「何が間違いなのよ河内君? 失礼しちゃうわね」  依然として生徒達が騒ぐ中、熟年の運転手は慌てる事なくギアを入れ直しアクセルをゆっくりと踏み込んでいく。  だが、エンジン音はするも前に進む気配も感覚もない。 「た……タイヤが、空回りしている?」 「何? どういう事です?」 「ちょっと、降りて確認してみます」  運転手は淀谷にそう言うとバスのドアを開け、懐中電灯を片手に降り口のステップへと立つ。  そこで、足が止まった。 「…………地面が」  懐中電灯で下方を照らすも、そこにアスファルトの地面は現れず、ただ延々と闇が続いていた。 「どうなってるんだ……。まるで--」  まるで闇の中にバスが浮いている。と、運転手は言いかけた。
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