闇に浮かぶ箱

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 会話が尽き、他にやる事と言ったら、自身の携帯機器をいじる事だけだった。 「あれ? 圏外だわ」 「トンネルの中だからだろ?」 「だってコレ、N社の最新のスマホだよ? どんなに山奥のトンネルの中でも繋がるハズなんだけどな」 「僕のもだ……」 「澪のも!」  結局、生徒が持つ携帯機器は全て圏外だった。  外部との連絡ができないと分かった途端、生徒達は一気に不安の波に襲われ始める。  淀谷も、すでに言葉を失っていた。  そんな中、 「みんな、落ち着きたまえ」  そう口を開いたのは、クラス委員長の港 猛(みなと たける)。 「他にトンネルを走っていた車や、他のクラスのバスだって僕達と同じ状況である事は間違いない。だからそのうち必ず救助が来るハズだ」 「そうです。心配しなくても必ず皆さんお家に帰れますから」  港に続いて口を開いたのは、副委員長の小泉 香(こいずみ かおり)。 「蓮沼君、深呼吸深呼吸」 「ふーっ……はーっ……」 「磯辺さん、これ使って」 「ううっ……」  席を回り、ひとりひとりに励ましの言葉をかけたり、泣いている生徒にハンカチを手渡したりしていく小泉。  二人のお陰で、なんとか生徒達は落ち着きを取り戻していった。
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