闇に浮かぶ箱

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  それから2時間が経過。 「…………」  全く進展の無い状況に、淀谷は無表情でタバコをくわえ、その先端にライターで火を点けた。 「あの、すみません先生、車内は禁煙ですので……」  バスガイドの言葉を無視して、口から煙りを吐く淀谷。  不穏な空気が煙りと共に漂う中、 「けっ……。大人は堂々と吸えていいよな」  その微かに聞こえた言葉に、淀谷の視線は座席の隙間から覗く金髪頭に向けられる。 「聞こえたぞ沢村。って事はお前、いつも隠れて吸っているという事だな?」 「あ? なんでそうなんだよ?」  淀谷はクラス一の問題児である沢村 湘(さわむら しょう)の席に近付くと、手の平を上に向けた。 「出せ」 「ああ!? 何をだよ!」 「墓穴を掘った癖に往生際が悪いぞ」  苛立ちが募った沢村はついに席を立ち、その試合前のボクサーのような迫力ある形相を淀谷の澄まし顔に近付けた。 「うるせえ! マナーを守らねえてめえにとやかく言われる筋合いはねえんだよ! このクソ教師が!」  --パァァン!  渇いた音が鳴ったと同時に、沢村の右頬に衝撃と痛みが走った。
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