消失ー『花嫁』の意味

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「芹!」 部屋に入った瞬間、青は喜びでめまいがしそうなほどに興奮していた。芹は詩織に支えられ体を半分起こしていた。しばらく寝たきりだった芹は全身が痛くて仕方なかったが、意識を取り戻したら寝てなどいられなかった。 青はそんな芹の体を抱きしめその温もりを噛み締める。決して強くはないものの、脈打つ鼓動と漏れ聞こえる芹の声に青は繰返しよかったと呟いた。 「青さんーーーー苦しっーー」 「芹ーーよかった!」 「ーー心配かけてごめんなさい」 芹の指がそっと青の背中に触れる。 「ーーーー」 青は言葉なく芹の顔を覗いた。黒い瞳には光が点っている。青は嬉しくてとっさに耳の後ろに唇を寄せて唇を噛んだ。 「おかえり」 その言葉は何より暖かかった。芹は自然と青の体に心を寄せて答えた。 「ただいま」
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