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「あー、気持ちよかった。
あ、今日は満月?
んー、残念。少しだけ欠けてる」
少女は部屋の窓から空を見上げ、少し日に焼けたうす茶色の長い髪をタオルで挟み込んでいる。
覆いきれない毛先からは水滴が流れ、胸元に落ちた粒はパイル素材の部屋着に吸い込まれる。
季節は夏。
白とオレンジのボーダーから覗く細い手足は髪同様少し焼けていてほんのり赤い。
「多分明日は満月ね。
――嬉しい!大好きな満月の夜に誕生日なんて」
少女は幼さの残る顔をふにゃりと緩めて嬉々としている。
「早く明日にならないかなぁ」
無邪気に笑う少女には 、明日の満月を今か今かと待ち潜む闇のうごめきはなど気付く由もなかった。
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